2019年3月28日木曜日

【事業】広島アクターズラボ演技育成科を開講します。

広島でアクターズラボを始めたのが2016年。
あっという間。マジあっという間に人生が過ぎていく感はんぱないです。今年の桜も瞬きしたらもう散ってると思う。

今年の6月にはいよいよ本公演を控えております。
さて、毎年ラボ生を募集していて躓くことがあります。
もともと演劇初心者でも構わない、というくくりで募集をするのですが、継続していけばいくほど、いちいち単年度でリセットされないことも増え、講座の内容は作品作りや、俳優としての在り方、エチュードによる己の演技やその瞬間の覚悟と向き合うことに指針が向いており、いわゆる身体的な基礎訓練や、発声や、セリフの発し方という、「できるようになった」と短時間で達成感が得られることに割く時間は少なくなってきたからです。もちろんないわけではないのですが、それに特化はしてない(ので安易に達成感は得られないようです)ので、ほんとの初心者という人にはかなり敷居が高くなってしまった部分が否めません。

そこで、開講を決意しました。この4月から。
ガチの初心者、大学生、高校生でもだいじょうぶという特化した場を。
演技がうまくなりたいという若者のためのストレートなトレーニングの場を。

応募要件は下記です。
4月の開講日は
4/7(日)、4/10(水)、4/17(水)、4/24(水)です。
(※初回のみ、柳沼氏による講座となります)
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広島アクターズラボ演技育成科 受講生募集
【主任講師】澤雅展(烏丸ストロークロック・俳優)

澤雅展(さわ・まさのり)

1989年滋賀県生まれ。柳沼昭徳が講師を務めたNPO法人劇研「劇研アクターズラボ」に2011年より参加。
また、2014年より同じく柳沼が立ち上げた演劇コミュニティ「えんげきの庭」に参加、2016年にはそこから生まれた劇団「庭ヶ月」での1年をとおした創作活動を経て、2017年4月より烏丸ストロークロックのメンバーとなる。











【開講日】毎週水曜日19:00-21:00(講師のスケジュールにより変動する月もあり)
【講座内容】俳優としての身体訓練、基礎知識、発声、ほか演技の基礎となること全般
【場所】無色透明横川事務所
【受講料】月額5,000円(1レッスン1,250円)
【応募対象】15歳~30歳までの男女、15名まで
【応募要件】俳優として舞台に立つことを前提に、演技方法・基礎知識の向上を意欲的に目指す方
【応募・お問い合わせ先】舞台芸術制作室無色透明(こちらのフォームよりお申し込みください)


「演技を学ぶ」
ということについて、少しわたしの私感を述べます。
「演技が上達したい」「もっとうまくなりたい」
という事は、役者を志す人には一度は訪れる思いではないかと思います。
もちろんわたしにもそういう時はありました。
ただね、最近よく思うんです。
それについて実は魔法でもあるんじゃないか、って心のどこかでまことしやかに信仰されてるんじゃないか、と。いつかなにか奇跡が降ってくる、ほんとの自分はここには居ないだけでどこかにいる、て。心のどこかで。
わたしの立場で言っちゃいけないことかもしれませんが、わたしはワークショップというが苦手です。すいません、年に何回も企画しときながら。(いや、意味はあるんですよ。少なくとも無色透明で企画するワークショップに関しては、ちゃんとそれぞれ骨子ありきでやってます)
ただね、「演劇=ワークショップ」みたいな風潮になるのがいやなんです。
広島くらいの都市規模だと、まあまあ年間どこかで誰かがワークショップをやってます。
しかしワークショップというのは入り口にすぎません。一過性のものです。出会いの場、発見の場としての役割は果たせるかもしれませんが、出会ったらどうするのか、発見したらどうするのか、まで考えられる場所ではないです。
もちろん、わたし自身出会いの場発見の場としてのワークショップが悪いとは断じて思ってなくて(だから企画するわけで)わたしもダンスのワークショップに行くときは(なぜかダンスのには行く)「ダンスが上達したい」「ダンサーになりたい」と思っていっているわけではないし、単純にその場を楽しみたくて行きます。(全然できない自分との対峙という役割もはたしてましたけど)
要するに、多種多様なワークショップを渡り歩いたり、ワークショップで出会った人に声をかけられちょっとした公演に出演してみる事を繰り返すことで演劇をしている錯覚に陥るということが、すごく危険だと思っているのです。どんな有名な演出家や東京の作家のワークショップに参加したってそれはワークショップでしかない。自分の足で舞台に立ってお金をもらって人に演技を見せるってことは別の話だと思っています。ワークショップに参加することは演技が上達するとか、役者として成長するとか、そういう事とは基本的には直結はしないと考えています。
ワークショップは魔法じゃない。
何事でも同じように、その道を究めるには、学び、経験を積み、結果を出し、そして時に在る不条理に耐えながら来る日も来るも粛々とやり続けることしかないと思っています。
「継続は力なり」じゃなくて、「継続だけが力なり」というのはわたしの師の言葉。

アクターズラボはワークショップではありません。
こちら側からはなんのサービスもしませんし、参加して楽しかったとかいう感想もついぞ聞いたことがありません(ほほほ・・・)だいたい、やめる人は理由は様々ですが概ね「このペースでは演劇は続けられない」事に悩み苦しんだ末に辞めていきます。
いや、しんどいと思います。でもそもそも演劇って楽なもんだっけ。って疑問にもぶちあたって、しんどさがミルフィーユしてくる。
仕事をしながら演劇を続けるためには、まず一役者としてどうあるべきか、生活と折り合いをつけながら表現活動に心血を注げるか、舞台に立つ責任をどう考えるかなど、社会や人間関係の中で表現を追求していく事の意味を自分の脳みそで考え選択していかねばならず、それがものすごくしんどいんです。この道を選ぶとどうしても鈍感ではいられない。
できれば、わたしだってこんなめんどくさい事に気づかずに、もっと楽なところで演劇ができてたら幸せだったかも、て思う事もありますよ、ええ。

というわけで、広島アクターズラボではそういう精神面へのアプローチが方が多いため、前述したような具体的なテクニックのようなものに特化した時間は少ないです。あるにはありますが。
でも、上達するために具体的な方法を知りたいという人に、門戸を閉ざすことも、なんとなく良くないと感じていました。わたしだって本当にどうしていいか、誰だったらちゃんと教えてくれるのか、わからなくて悩んだ経験があるからです。
幸いわたしは、演劇の専科を専攻していた為、実は基礎となる重要な部分を、一番初めに得ることができる環境がありました。学校の授業にバレエも日舞も狂言も発声もあったし、初めて出会った演出家は演劇科の教授で、日本の演劇界を牽引してきたという間違いない人でした。それはほんとにラッキーだったと思います。
この歳になってわかることは、10代の終わりから20代の初めに、感じるべきこと知るべきことを得ているかいないかは、後々ものすごく大きく響いてくるということです。
失敗も挫折も、成功も達成も、19歳でするのと39歳でするのとでは、その次への伸びしろが全く違う。
だから、まっさらな若者ほど、ちゃんとまっとうで真剣な稽古の場があってほしい。
でないと、広島のお客様にまっとうな演技を見せられる俳優は増えない。広島はいつまでも演劇砂漠から抜け出せない。
そんな場を創れないだろうか、というわけで、育成科の開講に乗り出したわけです。
わざわざこんな忙しくなる直前に(涙)

正直、もうしんどいです。完全に事業は飽和してます。
そもそも、うちがやってることは普通は文化行政機関がやるよな事業だとおもいます。
予算も赤字も運営もこの脆弱な任意団体は結構もう限界です。毎年わたしはおろか無色透明のスタッフ全員が疲弊しまくってます。編み物に専念したいと毎日思います。
でも、「演劇うまくなりたいんです」と、わたしの前に具体的に20歳そこそこの子たちが現れると、放っておけませんでした。
なんかしないと、なんかしないと根が枯れちゃう。忙しいとすぐ自分のことばっかり考えてしまうけど、そんなのただの自己満足じゃない?自己肯定じゃない?後に続く子たちが誇りをもって広島で演劇を創れる環境を拓いていくのが、今の大人の仕事なんじゃねーの?そういう大人が前に居なくてわたしすごく苦しんだじゃん。だから同じ思いを後ろの子たちにさせちゃいけない。と思った次第です。