2019年3月31日日曜日

【雑記】ひび。雑談

週末が自由になるのは本当に久しぶりで、今日が終わるとまたしばらくないんですが、「よし、心置きなく勉強するぞ」と思っても、どっと疲れが出て動けない土曜日(反省)
大抵、休めたとしても1日なのでこの後悔でおわる日々が多かったのですが、今週は運良く今日も自宅で自由に時間が使える。
というわけで、朝早起きして早め早めに取り掛かる。
テレビつけたらきっと1日中CSI科学捜査班見ちゃうから、封印。
「企画書をかくなら頭が冴えてるうちの午前中」という教えに従い、なるべく明るいうちに色々やりたいのですが、家にいたらいたで、洗濯したり片付けしたり、普段できないことに色々気が散ってしまう。あれです、試験勉強中に机の片付けをしてしまう子。一度エンジンがかかればいんですけど、起動がクラシックカー並みに不経済。押しがけしないとかかんない。
今日も朝から洗濯したり「あれどこ行ったっけ」と普段忘れてるものを探し始めたり夕飯の買い物に出かけたりしてしまって、なんだりかんだりしているともうこんな時間(12:20)PCをつけたらMacがソフトウェアをアップデートしろと言ってくる。PCで勉強しておるのでその間別のことをしてしまう。
ああいやだ。時間がどんどんすぎていく。
でも、今日はもういいことにした。そんなクサクサした気持ちで焦ってもしょうがない。やろうと思っていたことをやっちゃおう。
わたしは文房具と革製品が大好きで、とにかく勉強もそれでモチベーションを保とうとしているといっても過言ではないです。
というわけで、なぜかペンケースのメンテナンスからはじめてしまうダメ人間。いいのです。今日はそんな自分を許してあげるのです。
どさくさに紛れてレザーメンテナンス用品の箱を開けてしまう。

メンテナンスあんまりしないけどたまにやろうと思った時、
何を買っていいのかよくわかんない
という人の為に(わたしもよくネットで検索するので)おすすめをご紹介

【汚れをおとすもの】
その名の通り靴クリーナーですが、丈夫な皮革製品には十分使えます
なんてたって一番の魅力は安さ。
使い古したストッキングで掃除するといいです。
(BREEくらいの強度のある革はこれで十分)

レザーケアはコロニル派とかモゥブレイ派とか色々ありますが
わたしはコロニル派です。
滑らかでその名の通り、ラムなどのデリケートな皮革に使います。
ちょっとお高めなんですが、安心して使えるので、結構こればっかり
使ってます。

最近入手したヒット商品がこちら。カバンやジャケットなど、大きなものを磨くのに
この大きさがとても便利。

ちょっと高い。でも使いやすいです。

【防水するもの】
大きいサイズ。
買ったばかりの革靴の防水にもいいですよ。

これはネットでいろんなひとが 絶賛してます。
たしかに優秀。やわらかいラムレザーでも難なく使えます。
でもすぐなくなっちゃうし高いので、靴などにはおすすめできません。



勉強やる気になーれ、と応援してくれるペンケースたち。
小さい方は昔藤井さんからバースデープレゼントにもらったもの。
万年筆用です。
大きい方は仕事と勉強につかう筆記具入れ。
クリーナーして、汚れ防止に防水スプレー。あっという間に終わっちゃった。
縁あって会社の上司から預かったBREEの小銭入れちゃんを預かっているので、
ついでにオイルケア。傷みが結構深刻で、普通の作業ではうまくいかなくて、
時間をかけてミンクオイルで根気よくケアしていますが、
欲を言うならひび割れる前に預けて欲しかった(涙)
ひび割れたヌメ革は再生できないのす。少しでもひび割れが目立たなくなりますように。

シャープペンの進化がすごい。
0.5の方は測量士の試験勉強の時からずっとデルガードLxを愛用してますが、
最近細い字を書く為に0.3のシャープペンを入手しました。
昔、0.3買ってみたけどぽきぽき折れるんでさっさと使用を挫折したけど、
すげー進化してました・・・。
オレンズネロ、すごいです。芯を出さずに書くんだよ。どんな魔法なの。
適度な重量感(20gくらい)もわたしにはつかいやすいです。

基本OL的物欲には乏しい(はず)ですが、
文房具とカメラには、愛欲が止まらないです。
ブログアップする為に久しぶりにGR持ったら楽しくてさらに気が散る始末(涙)
(そして唯一持ってないミラーレスをネットで物色する始末・・・
買いません。今年は我慢します宣言)

さ・・・勉強に戻ろう・・・。
2020年の今頃はきっと楽になっている、と信じて。

あと最近出勤する時とか帰り道もずっとこれ聴いてます。
回し者でもなんでもないけど、この人歌は本当に好きなのだと思います。


2019年3月28日木曜日

【事業】広島アクターズラボ演技育成科を開講します。

広島でアクターズラボを始めたのが2016年。
あっという間。マジあっという間に人生が過ぎていく感はんぱないです。今年の桜も瞬きしたらもう散ってると思う。

今年の6月にはいよいよ本公演を控えております。
さて、毎年ラボ生を募集していて躓くことがあります。
もともと演劇初心者でも構わない、というくくりで募集をするのですが、継続していけばいくほど、いちいち単年度でリセットされないことも増え、講座の内容は作品作りや、俳優としての在り方、エチュードによる己の演技やその瞬間の覚悟と向き合うことに指針が向いており、いわゆる身体的な基礎訓練や、発声や、セリフの発し方という、「できるようになった」と短時間で達成感が得られることに割く時間は少なくなってきたからです。もちろんないわけではないのですが、それに特化はしてない(ので安易に達成感は得られないようです)ので、ほんとの初心者という人にはかなり敷居が高くなってしまった部分が否めません。

そこで、開講を決意しました。この4月から。
ガチの初心者、大学生、高校生でもだいじょうぶという特化した場を。
演技がうまくなりたいという若者のためのストレートなトレーニングの場を。

応募要件は下記です。
4月の開講日は
4/7(日)、4/10(水)、4/17(水)、4/24(水)です。
(※初回のみ、柳沼氏による講座となります)
++++++++++++++++++++
広島アクターズラボ演技育成科 受講生募集
【主任講師】澤雅展(烏丸ストロークロック・俳優)

澤雅展(さわ・まさのり)

1989年滋賀県生まれ。柳沼昭徳が講師を務めたNPO法人劇研「劇研アクターズラボ」に2011年より参加。
また、2014年より同じく柳沼が立ち上げた演劇コミュニティ「えんげきの庭」に参加、2016年にはそこから生まれた劇団「庭ヶ月」での1年をとおした創作活動を経て、2017年4月より烏丸ストロークロックのメンバーとなる。











【開講日】毎週水曜日19:00-21:00(講師のスケジュールにより変動する月もあり)
【講座内容】俳優としての身体訓練、基礎知識、発声、ほか演技の基礎となること全般
【場所】無色透明横川事務所
【受講料】月額5,000円(1レッスン1,250円)
【応募対象】15歳~30歳までの男女、15名まで
【応募要件】俳優として舞台に立つことを前提に、演技方法・基礎知識の向上を意欲的に目指す方
【応募・お問い合わせ先】舞台芸術制作室無色透明(こちらのフォームよりお申し込みください)


「演技を学ぶ」
ということについて、少しわたしの私感を述べます。
「演技が上達したい」「もっとうまくなりたい」
という事は、役者を志す人には一度は訪れる思いではないかと思います。
もちろんわたしにもそういう時はありました。
ただね、最近よく思うんです。
それについて実は魔法でもあるんじゃないか、って心のどこかでまことしやかに信仰されてるんじゃないか、と。いつかなにか奇跡が降ってくる、ほんとの自分はここには居ないだけでどこかにいる、て。心のどこかで。
わたしの立場で言っちゃいけないことかもしれませんが、わたしはワークショップというが苦手です。すいません、年に何回も企画しときながら。(いや、意味はあるんですよ。少なくとも無色透明で企画するワークショップに関しては、ちゃんとそれぞれ骨子ありきでやってます)
ただね、「演劇=ワークショップ」みたいな風潮になるのがいやなんです。
広島くらいの都市規模だと、まあまあ年間どこかで誰かがワークショップをやってます。
しかしワークショップというのは入り口にすぎません。一過性のものです。出会いの場、発見の場としての役割は果たせるかもしれませんが、出会ったらどうするのか、発見したらどうするのか、まで考えられる場所ではないです。
もちろん、わたし自身出会いの場発見の場としてのワークショップが悪いとは断じて思ってなくて(だから企画するわけで)わたしもダンスのワークショップに行くときは(なぜかダンスのには行く)「ダンスが上達したい」「ダンサーになりたい」と思っていっているわけではないし、単純にその場を楽しみたくて行きます。(全然できない自分との対峙という役割もはたしてましたけど)
要するに、多種多様なワークショップを渡り歩いたり、ワークショップで出会った人に声をかけられちょっとした公演に出演してみる事を繰り返すことで演劇をしている錯覚に陥るということが、すごく危険だと思っているのです。どんな有名な演出家や東京の作家のワークショップに参加したってそれはワークショップでしかない。自分の足で舞台に立ってお金をもらって人に演技を見せるってことは別の話だと思っています。ワークショップに参加することは演技が上達するとか、役者として成長するとか、そういう事とは基本的には直結はしないと考えています。
ワークショップは魔法じゃない。
何事でも同じように、その道を究めるには、学び、経験を積み、結果を出し、そして時に在る不条理に耐えながら来る日も来るも粛々とやり続けることしかないと思っています。
「継続は力なり」じゃなくて、「継続だけが力なり」というのはわたしの師の言葉。

アクターズラボはワークショップではありません。
こちら側からはなんのサービスもしませんし、参加して楽しかったとかいう感想もついぞ聞いたことがありません(ほほほ・・・)だいたい、やめる人は理由は様々ですが概ね「このペースでは演劇は続けられない」事に悩み苦しんだ末に辞めていきます。
いや、しんどいと思います。でもそもそも演劇って楽なもんだっけ。って疑問にもぶちあたって、しんどさがミルフィーユしてくる。
仕事をしながら演劇を続けるためには、まず一役者としてどうあるべきか、生活と折り合いをつけながら表現活動に心血を注げるか、舞台に立つ責任をどう考えるかなど、社会や人間関係の中で表現を追求していく事の意味を自分の脳みそで考え選択していかねばならず、それがものすごくしんどいんです。この道を選ぶとどうしても鈍感ではいられない。
できれば、わたしだってこんなめんどくさい事に気づかずに、もっと楽なところで演劇ができてたら幸せだったかも、て思う事もありますよ、ええ。

というわけで、広島アクターズラボではそういう精神面へのアプローチが方が多いため、前述したような具体的なテクニックのようなものに特化した時間は少ないです。あるにはありますが。
でも、上達するために具体的な方法を知りたいという人に、門戸を閉ざすことも、なんとなく良くないと感じていました。わたしだって本当にどうしていいか、誰だったらちゃんと教えてくれるのか、わからなくて悩んだ経験があるからです。
幸いわたしは、演劇の専科を専攻していた為、実は基礎となる重要な部分を、一番初めに得ることができる環境がありました。学校の授業にバレエも日舞も狂言も発声もあったし、初めて出会った演出家は演劇科の教授で、日本の演劇界を牽引してきたという間違いない人でした。それはほんとにラッキーだったと思います。
この歳になってわかることは、10代の終わりから20代の初めに、感じるべきこと知るべきことを得ているかいないかは、後々ものすごく大きく響いてくるということです。
失敗も挫折も、成功も達成も、19歳でするのと39歳でするのとでは、その次への伸びしろが全く違う。
だから、まっさらな若者ほど、ちゃんとまっとうで真剣な稽古の場があってほしい。
でないと、広島のお客様にまっとうな演技を見せられる俳優は増えない。広島はいつまでも演劇砂漠から抜け出せない。
そんな場を創れないだろうか、というわけで、育成科の開講に乗り出したわけです。
わざわざこんな忙しくなる直前に(涙)

正直、もうしんどいです。完全に事業は飽和してます。
そもそも、うちがやってることは普通は文化行政機関がやるよな事業だとおもいます。
予算も赤字も運営もこの脆弱な任意団体は結構もう限界です。毎年わたしはおろか無色透明のスタッフ全員が疲弊しまくってます。編み物に専念したいと毎日思います。
でも、「演劇うまくなりたいんです」と、わたしの前に具体的に20歳そこそこの子たちが現れると、放っておけませんでした。
なんかしないと、なんかしないと根が枯れちゃう。忙しいとすぐ自分のことばっかり考えてしまうけど、そんなのただの自己満足じゃない?自己肯定じゃない?後に続く子たちが誇りをもって広島で演劇を創れる環境を拓いていくのが、今の大人の仕事なんじゃねーの?そういう大人が前に居なくてわたしすごく苦しんだじゃん。だから同じ思いを後ろの子たちにさせちゃいけない。と思った次第です。

2019年3月13日水曜日

【ウタとナンタのピロ電まつり】パンフレット寄稿文と昨日の映像

昨日の放送をご覧いただいた方、ありがとうございました。
個人的には使われていないはずだったわたしのインタビューが流れてビビりました。そして自分の瞬きの多さと長さに引きました・・・(わたし考えながら話すとき目を閉じてるとかさらに転じて白目剥いてるいうのは人から言われて知ってはいたんですが、いざテレビの画面で見ると衝撃でかいですね)
き・・・気を付けたい、というか治したい・・・。
という、個人的なあれこれはさておきまして、総監的には、数日間にわたって取材くださり、出演メンバーへのインタビューや広島の俳優たちとひゅーるのメンバーのコミュニケーション風景などが垣間見え嬉しかったです。
以下のリンクより視聴可能だそうです。
「広島ニュースTSS/テレビ新広島」
http://www.tss-tv.co.jp/tssnews/000003270.html
スタッフの山田めいが放送をスマホで撮影してくれましたので↑は視聴期限があるとおもうのでこちらもアップしておきますね(わたしは打合せの為テレビ見れなかったので)

一か月前に前売りが完売し、当日券もほんとうにわずかしか出せず、お入りいただけなかったお客様もたくさんいらして、制作としてはもうしわけない気持ちでいっぱいでした。
本当にごめんなさい。

当日パンフレットに、ひゅーるぽん理事長の川口さん、演出の永山さん、脚本の柳沼さん、そしてわたしも、この公演に際しての文章を寄稿しました。
お手に取っていただけなかった方のために、こちらでご紹介させていただきますね。

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また出会える、また出会うために
NPO法人ひゅーるぽん 川口隆司
本日はご来場ありがとうございます。
ふと、最近「息苦しさ」を感じることがあります。最近と書きましたが、近年、年が新しくなるごとに「息苦しさ」を感じることが増えてきたと言うほうが正しいかもしれません。私たちが活動を始めた1981年。休日に家に閉じこもりがちだった障がいのある子どもたちと遊ぶことが私たちの活動の中心でした。2001年、不登校、学級崩壊など、子どもだけが問題視される時代の中、私たちはそれら子どもたちが安心して楽しく成長していける学校でも家庭でもない育ちの場を作りました。天気がいい日は屋根の上で絵を描き、暑い日は電気代節約のためにみんなで氷をかじり、台風が来れば強風の中の凧揚げを試し…と、一日を通して笑いが止まらない時はなく、子どもたちもスタッフも次の日が来るのが楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。
時代が変わり、現在この活動は「放課後等デイサービス」という公的な「サービス」になりました。変わったのは名前や仕組みばかりではなく、現場の風景も大きく変わりました。連日のようにやってくる事務連絡のメール。細部まで規定したガバナンスに沿った運営が求められ、そのチェックのために書類を作成し、さらに受講必須の研修も減ることはありません。自分も含めスタッフが難しい顔をしてパソコンに向き合いつづけている姿は日を追うごとに増えていることを感じます。一方で、今日も現場では「ワーク&ライフバランス」を目指して運営をしていかねばなりません。そこで、やっと、「18年前よりも笑い声や会話が減った」と気づき、とてつもない息苦しさを感じるのです。
 私たちは、誰に向き合って、何のために仕事をしているのだろう。私たちが目指す幸せな未来はこの毎日の積み重ねの先にほんとうにあるんだろうか。
「おきらく、ごきらく」の猿猴(えんこう)たちの世界は、心の底からのうらやましさを感じる単純かつ幸せな世界です。「ピカ」を境に、人間とは別世界で暮らし始めたという猿猴が伝えるメッセージはあまりにも示唆に富んでいます。猿猴は、人間の「生き方」を問う存在であると同時に、また次に私たちが人間として幸せな出会いと成長を迎えることが可能であり続けるために存在しているようでもあります。
そして、もうひとつ。私は、この舞台が様々な人たちが共に演じることで生まれ来た舞台であるという事実に強い感動を覚えるのです。


愛すべき場所
演出 永山智行 [劇団こふく劇場]
みなさん、こんにちは。演出を担当した宮崎の劇団こふく劇場の永山智行と申します。本日は劇場に足をお運びいただき、ほんとうにありがとうございます。
 さて、劇団は2作目からがほんとうの劇団になる、というのが、わたしの持論なのですが、この「おきらく劇場ピロシマ」もついに2作目となる作品の上演日を迎えることになりました。
劇団の1作目は情熱と勢いと幸運で、どうにか上演できたりするものですが、2作目、3作目には、それに加え、地に足のついた深い意志が必要になります。そして何より、参加する出演者、スタッフのみんなが、その場所をかけがえのない場所だと愛してくれること、それなしには、その場所はみんなの広場とはならないものだと思うのです。
この「おきらく劇場ピロシマ」は、「広場をつくろう」というワークショップから生まれました。そして、ここはいま、みんなが愛してくれる広場になろうとしている。ワークショップや稽古で参加者のみんなに会い、「おきらくごきらくー」とお互いに声をかけあう姿を見るたびに、その思いはますます強くなっています。
 画面上の強い言葉が、日々、人と人を分断していくこの国で、こうして立場の違う人間たちが、そのそれぞれの体を持ち寄り、出会い、折り合いをつけ、その場をもっと優しいものにしていこうと、愛し続ける。それは確かに、この広島の片隅で行われているほんの小さな営みかもしれません。けれど、この小さな営みにこそ、わたしたちの暮らしの希望はあるのだと、わたしは強く信じています。
 さて、いよいよ2作目の時間がはじまります。まずは何より、ここでの時間を最後までごゆっくり、そしてお気楽にお過ごしください。
【演出プロフィール】 永山智行 (ながやまともゆき)
1967年生まれ。劇作家、演出家。劇団こふく劇場代表。
2001年『so badyear』でAAF戯曲賞受賞。同作をはじめ、戯曲は劇団外での上演も多い。2006年10月から約10年間、公益財団法人宮崎県立芸術劇場ディレクターを務めた。また、2007年からは障がい者も一俳優として参加する作品づくり (みやざき◎まあるい劇場) に取り組み、地域における演劇の質の向上と、広がりを願い活動している。

ようこそ、ピロシマへ
脚本 柳沼昭徳 [烏丸ストロークロック]
私は、ふだん自分の劇団では自分で書いた脚本をみずから演出しています。昨年、演出の永山さんの「自分の書きたいことを、どうぞ思いっきり書いてください」という言葉をそっくりそのまま受け止めた私は「これどうやって演出つけるんやろう……」「知らんでぇ……」とつぶやきながらカッパの猿猴(えんこう)たちの暮らすファンタジー「ウタとナンタの人助け」を描きました。そんな無責任で奔放な脚本であったにも関わらず、本番では出演メンバーとひゅーるぽんのスタッフの皆さん、広島の演劇人の皆さんたちが、まさにピロシマに暮らす猿猴たちのようにひとつとなって、みごと多くの観客の心を優しくつかむ佳作となりました。
そしてシリーズ第二作目となる「ウタとナンタのピロ電まつり」。
こんどは、えっちゃんというお年ごろの女の子と、そのパパとママがピロシマに迷い込みますが、前作同様、思春期の子どもたちを主軸にピロシマワールドが展開されていきます。子どもから大人へと移ろいゆく少年少女が、些細な日常に違和感を浮かべ、迷い込んだピロシマで猿猴たちとの交流の中で自身の違和感の実態を知り、人間界に戻り成長するというのが大筋です。
 この物語のなかの猿猴たちは、いい加減で、事あるごとにふざけているように見えますが、その背景には、かつて、猿猴と人間とは共に同じ広島に暮らしてたけれど、原爆が落とされ街が破壊されたことがきっかけで、猿猴たちは人間と離れ、自分たちの世界を作った。といういきさつがあります。人間の世界を基準にすれば文明や道徳、知的レベルはずっと低いです。しかし、人間たちが戦後、経済的な豊かさを求めて、世界経済に追いつけ追い越せと励んだいっぽう、猿猴たちは、彼らの交わす挨拶「おきらくごきらく」にあらわれているように、猿猴たちは、猿猴なりに他者に優しくしたり、他者を許したり、それなりの努力をして、仲間同士いい加減でお気楽に暮らしていける道を歩んできました。
こうしたある理想的な世界を形にするため、作品に参加した仲間たちの人間関係は猿猴のように寛容に、また演劇作品の質を求める姿はごくシビアに今日まで稽古を重ねてきました。
毎日お忙しいとは思いますが、ふと足を止めて、このお芝居を見ていただいて、お帰りに美味しいものでも食べて、お気楽ごきらくに今日という日をお過ごしいただけると幸いです。
【脚本家プロフィール】 柳沼昭徳 (やぎぬまあきのり)
京都の劇団「烏丸ストロークロック」代表。
フィールドワークを行いながら現代社会のあり様に向かい合い、モノローグを活かした心象風景を作品に描き込む事で濃密な舞台を創り出す。全国各地で高校生から高齢者までを対象とするワークショップや、市民参加型の脚本・演出も手がける。
第60回岸田國士戯曲賞最終候補ノミネート 平成28年度京都市芸術新人賞受賞


「ココロノヨユウ」
プロデューサー 岩﨑きえ
まずは、昨年度に引き続き今年もまたこの日を迎えられましたことに際し、多くの方々のご協力、ご助力に心から感謝申し上げます。
前作「ウタとナンタの人助け」は、本公演終了後も多く再演のご依頼を頂き、思えば一年中公演していたような気が致します。私は長く舞台の世界に携わっていますがそのような経験は本当に初めての事です。
 この作品の稽古が始まってすぐの事でした。私は代役で台本の読み合わせに参加し、ある出演俳優が私の担当していた役に向かって発した「ココロノヨユウ?」というセリフに、自分でも驚くぐらいひどく動揺したのを覚えています。私は無意識に(かなり)適当にセリフを読んでおり、逆に彼女は無意識にセリフの真意を突いた演技をしたからです。長年芝居をしてきたからこそ判る衝撃でした。真の演技、真のセリフというものは自意識を超越した無意識の中にこそ在るという事を真正面から叩きつけられたような気がしたのです。私は、この活動を福祉活動と感じたことは一度もない理由の一つに、こういう事が起きるからだと思います。俳優が苦労して稽古してもなかなか達せない場所に彼らはすんなりとたどり着いてしまう時がある。舞台という虚構の世界の中で輝くのは嘘のない芝居、というややこしい矛盾をいとも簡単に飛び越えてしまいます。
 芸術活動というのは兎角収入に繋がりにくいものです。実際私自身も演劇活動で日々の糧を得られているわけではなく、会社員として時間やお金や家族など様々なことを遣り繰りしながら、演劇の専門家として恥じない仕事をする為に必死の毎日です。そんな中稽古場に行くと、ゆっくりと丁寧に、ただただ演じる喜びに満ちた「おきらく劇場ピロシマ」のみんながいます。彼らと居ると、知らず知らずの内に演劇を愉しむココロノヨユウを失いかけている自分に気づかされるのです。
 お金では測れない色んなものがこの舞台には詰まっています。今日お越しくださった皆様にも、日常から少し離れたココロノヨユウ時間を過ごして頂けることを心から願っています。本日はご来場本当にありがとうございます。

2019年3月11日月曜日

【明日夕方のニュース番組にて】ウタとナンタのピロ電まつりの活動模様が放映されます

ご覧いただけるのは広島近辺の方となりますが、明日3/12(火)TSSプライムニュースにて、今回の舞台を取材頂いた模様が放映されます。
18時14分~18時50分の間だそうです。
もしよろしければご覧くださいませ。