2016年6月30日木曜日

柳沼昭徳アクターズラボ、始動しました。

先週末から1年間にわたる柳沼昭徳アクターズラボがついに始まりました。
「派手なワークショップとかしない」という柳沼さんの言葉が印象的でした。
決して参加しやすい条件ではないこのラボに1期生として集まったメンバーは、みんな意欲的で、エチュードも個性的。そのひとりひとりに丁寧な演出や解説がなされ、それに対し参加者も全員が自分の言葉で話さなければならない時間はとても豊かで、確かな胎動が感じられました。
まず公演があって、その稽古という形で演劇をすることにはやはり限界を感じます。
基礎をまず体得してから、各々が創作過程を経て本番を打つという流れをどうしても創りたかったのです。美術や音楽やダンス、同じ芝居でも伝統芸能などでは当然のことがどうしてこと現代演劇では無視されてしまうのでしょう。そのことに永く悩んできました。現地集合現地解散で公演現場に携わるのではなく、お客様という不特定多数のまえで「表現するのだ」ということにちゃんと自信と責任をもって立っていてほしいと強く願ってきました。
わたしは制作者なので、良い芝居を観たい創りたい、もっと役者にたくましく巧くなってほしいと思っても、自分自身ではどうすることもできません。はがゆいしもどかしいし己の不毛さに苛立つこともあります。だからといってそれにクレームばかり言っていたらただのうるさいクレーマーです(そんな時期もあったち思います(笑))
だから制作者として今できることをしなければならないと思いました。
制作にできることは、企画を立て、機会を作り、場を提供し、それを運営することです。
制作になって無色透明をたちあげてからそれほど年数があるわけではありませんが、いちばんはじめに志したことがぶれることは今でもありません。逆にそれ以外のことにはどんどん興味が無くなっていきます。
広島のお客様に1本でもいい演劇を観てもらう事。そして広島ではもちろんどこででも公演が打てる水準の創作作品を産みだせる舞台人を広島に増やすこと。
わたしが志すことは始めからこの二つだけです。
そのために自分のやるべきことをシンプルにしていこうという気持ちが年々強くなります。広く浅く広島で演劇に携わって消費と消耗を繰り返すのではなく、地味に地道にシンプルにやるべきことをする。それはすぐに結果がでるわけでもなく、評価や名声や栄光にもつながる事ではないけれど、そうであることに後ろ向きなことはなにも感じません。公演とは違い、派手さも打ち上げ感もない現場です。でもラボが終わった後のメンバーの顔をみて、確かな一歩を踏み出したと感じました。それは1人では決して出来ない事でもあります。1人だったらボロボロに疲れはててとっくに演劇なんかやめているだろうと思います。時を経てその志を共にしてくれる仲間ができたからえいと踏み出せたのだと思います。それもまた地味に地道に続けてきて得たかけがえのない財産です。そしてまたラボ生という新しい仲間が増えました。いつか1年中彼らの創作現場の制作だけに明け暮れる愉しい未来を想像せずにはいられません。
本番ありきのラボではありませんが、なにかしらこの基礎訓練が生かせる場を設けたいと考え、来年の6月に試演会を行う予定です。
1年という月日をかけて彼らがどうなっていくのか、とても楽しみです。